ゴールデンボールラバー
先日ひどい腹痛で緊急入院。療養と内視鏡検査の末、精巣腫瘍からの腹部リンパ節転移の疑いと診断された。
精巣腫瘍は確定で、転移かどうか、悪性かどうかは精巣摘出後病理検査で分かるらしい。
つまり取るのである。キンタマ。まじ?
精巣があることから分かるように、私は花も恥じらうアラサー男子である。事実そうかはともかく世間一般には働き盛りで、精巣腫瘍はこの年代に多く発症するようだ。多くと言っても、二人に一人は生涯で何らかのがんになるのに対して、精巣腫瘍は十万人に一人である。非ピックアップSSR一点狙いぐらいの確率だ。正気か。さらにはいわゆる悪性、つまりがんである可能性が非常に高い腫瘍だというのも特徴だ。
ともかく、腫瘍になった片方の睾丸は取らねばならない。もう片方は残るが、抗がん剤の副作用で生殖能力が失われる可能性がある。書いていて慚愧に堪えないが、配偶者やその可能性すら無いものの、将来のことは分からない。未来はいつだって明るく元気に健やかに人を不安にさせる。
そこで、精子凍結というものをオススメされた。読んで字のごとく、精子の冷凍保存である。液体窒素で凍らせるらしい。
これを最初に先生から聞いたとき、不謹慎というか、真面目に不妊治療等に取り組んでいる人には申し訳ないのだけれど、そういったものよりも技術への興味が勝ってしまった。精子だけとはいえ、コールドスリープなんてSFのド定番である。すぐに予約をとってもらって、行ってきた。
さて、精子を凍結させるためには当然精子を採集する。採集はコップより少し小さいサイズのカップに射精して、そこから精子を集める。もちろん一人で行う。
つまり、オナニーしなければならない。病院で。まじ?
病院とは聳え立つ科学の城。科学と技術の粋を集め、医学を修めた者とそれを目指す人々が集うバベルの塔。そこでシコる俺。正直まったく気分が乗らない。
さらにもうひとつ、致命的な問題があった。私は乳首を弄らないとイけないのだ。
前述したように、採集するカップはあまり大きくない。右手はかわいい小さなつぼみ、左手は激しく前後するのがホームポジションの私は、カップを持つ手が足りない。遍く衆生を救い上げる千手観音の御手も、イカ臭いのはちょっと・・・と、私から距離をとる。神は死んだ。ならば自分で何とかするしかない。
選んだ方法はカップを股にはさみ、前かがみになりながらおいたしになる方法だった。手がダメなら足。サバンナの常識だ。
かくして私は未来への切符を手に入れた。白濁したそれはまるで私の未来を暗示しているようだったが、まるで意味はわからなかった。
ちなみに気になるお値段のほうは2万ちょっと。さらに1年ごとに更新料1万円と、やってることの割りに意外とリーズナブルではないだろうか。何を基準にしていいかはわからないけれども。保険は適用外だが、配偶者がいる場合は自治体から助成金が出るところもあるようである。
そうして、これ帰りに知り合いと会って今日どうしたん?とか言われたらちょっと病院でシコって来たって言わないといけないのかなと怯えながら帰ったのが昨日のことで、今日はすでに入院しパラマウントなベッドの上。明日には手術である。今は名前負けしているこのIDもブログ名も、明日には追いつき、いつの日か追い抜いてしまうかもしれない。クソゲーか。