かたたま

ここがこの場所が私の玉があった場所よ

食べたらIQが下がる感じの肉が食いたい

ブログを始めたことを思い出した。がんのステージは2aだそうだ。BEP療法を4コース後、リンパ節廓清の予定。がっつり3ヶ月入院だ。入院してから10日ほどたち、1コースのうち二度目のブレオの投与が終了した。次の投与まで一週間暇である。

 

副作用はしゃっくりと軽い吐き気、微熱、軽度の貧血が出た。特に最初の5日間、エトポシドとシスプラチンの投与中に現れ、これが入院中ずっと続くならしんどいなぁと思っていたが、3、4日過ぎる頃にはほとんど引いていて、いまはかなり元気である。ブレオの副作用が今はほとんど感じられないのもあり、恐らく今から1クールの終わりまでが最も元気がある状態なのだろう。マジで平時の健康状態と変わらない。

そうなるとまあ暇なんだけど、暇つぶしの手段は大量に用意していて、3ヶ月あっても到底消化仕切れないだろう。もう仕事辞めて永遠の休暇に入りてぇ。

 

しかし、肉が食いたい。身体に悪そうな肉が食いたい。肉汁と共にIQが溶けていくような肉が食いたい。香辛料と油でギトギトの頭の悪そうな肉が食いたい。病院内にローソンとファミマがあるけれど、フライヤーはやっていない。ファミチキ下さい。

或いは只のゲーミング松ぼっくりなら

痛みは薄れ熱は出なくなり、連休中には退院が決まったが、まだ歩くには痛すぎるものの、ベッドの上では結構元気。つまり暇。お前の人生いつもそうだろと言われれば、返す言葉もないのだが、暇になるとつい考えてしまうのが未来のことだ。

 

他の精巣腫瘍の方のブログや手記を読んでみると、やはり転移先が進行して痛みが酷くなりがんが発覚、というのが一つの定型のようで、私もそれに当てはまる。まだ診断は確定していないので、リンパ節の腫れは一昨日食べた松ぼっくりかもしれないが、精巣腫瘍は非常に高い確率で悪性だというのが私を逃がしはしないだろう。非常に高い確率とは、つまりモンスターファームにおける命中率99%で、平易な日本語に直すなら五分五分だ。そして私は生まれてこの方ジャンケンで勝ったことがない。

また、治療期間は概ね3ヶ月~半年のようだ。私も先生にそれとなく聞いてみたところ、4クール(抗がん剤治療1クール=1ヶ月を4セット)と言われた。ちゃんと言ってくれるのはありがたい。しかし、まあ、とにかく長い。人は忙しすぎても過労死するが、暇すぎても死ぬ。多分。知らんけど。

 

だから、健康で文化的な最低限度の入院生活を送るには、この暇をどうするかにかかっているのだろう。そして私の暇つぶしとは、生き甲斐とは、すなわちゲームである。

ゲームのために学校に遅刻し、或いは欠席し、ゲームのために単位を落とし、ゲームのために就職したり辞めたりした。そんなゲーミング人生を送る私のゲーミングブログはゲーミングスマホで書かれており、当然ゲーミングレッドブルを飲みながらの執筆である。なんで病棟の自販機にレッドブルが売ってるんだ。地上8階から見下ろす夜景とレッドブルは、私に空を飛んでいるような気分を味会わせてくれるほどではなかったが、ここに入院している糖尿病や心臓病の患者にこんなもん飲ませたらホントに飛んじゃう。ヤバない?なんか急に不安になってきた。早く退院させてくれ。

大きな怪我や病気をしたことがある人は、人に優しくなれる

術後の痛みや発熱で、ここ二日は何も書く気が起きなかったが、今はようやく治まって、前回のブログが誰にも読まれなかったことに悲しみを覚えながら、こうしてなにかを書こうとしている。

 

というわけで、キンタマを取った。その嘆きよりも痛みのほうが今は強く、実感するより実際痛い。シグルイで藤木が片腕を失った際、バランスが取れずに転倒するシーンがあるが、片方の玉を失った私はどうなるのだろうか。

人体の不思議な現象のひとつに、幻肢痛というものがある。失ってしまった四肢が未だあるように感じ、ひどい痛みととみに現れるという。私にこれが起こるとしたら、幻玉痛とでも呼ぶべきだろうか。その痛みはげん玉ポイントを集めることでしか解消できない。資本主義のクソッタレめ。すべてのゲーマーが、メタルギアを永遠に失った痛みもまた、癒されることはない。

 

大きな怪我や病気をしたことがある人は、人に優しくなれると、よく聞く。今私は男性としての象徴の片割れを失い、アイデンティティークライシスの真っ最中であり、まあまあ大きな病気をしていると言える。けれども、全く優しくなれない。

とにかく、イビキがうるさい。泌尿器科の病棟というのはほとんどがじい様ばあ様の糖尿病患者であり、若い人マジレアだよーと看護師さんに言われた。そしてじい様とはイビキをかく生物であり、同室で私だけがイビキをかかない。三方をイビキに囲まれ、高熱と痛みにさいなまれながら、眠りにつく。いや、寝れない。私が何をしたというのだろうか。10年前ガンパレードマーチを借りたまま返してないことへの罰だろうか。かなり重い罪だ。がんになるのもしかたがない。罪はいつか償わなければならないが、それはそれとしてイビキは許せない。途中で息が止まってるのにすら腹が立つ。

 

だから、大きな怪我や病気をしたことがある人は、人に優しくなれるというのは真っ赤な嘘か、あるいは自分は生来のクズであり、人を許すことができない狭量な人間であるかのどちらかであろう。恐らくは後者であり、そしてまた私は、自分が人に愛されない理由を知った。

ゴールデンボールラバー

先日ひどい腹痛で緊急入院。療養と内視鏡検査の末、精巣腫瘍からの腹部リンパ節転移の疑いと診断された。

精巣腫瘍は確定で、転移かどうか、悪性かどうかは精巣摘出後病理検査で分かるらしい。

 

つまり取るのである。キンタマ。まじ?

 

精巣があることから分かるように、私は花も恥じらうアラサー男子である。事実そうかはともかく世間一般には働き盛りで、精巣腫瘍はこの年代に多く発症するようだ。多くと言っても、二人に一人は生涯で何らかのがんになるのに対して、精巣腫瘍は十万人に一人である。非ピックアップSSR一点狙いぐらいの確率だ。正気か。さらにはいわゆる悪性、つまりがんである可能性が非常に高い腫瘍だというのも特徴だ。

 

ともかく、腫瘍になった片方の睾丸は取らねばならない。もう片方は残るが、抗がん剤の副作用で生殖能力が失われる可能性がある。書いていて慚愧に堪えないが、配偶者やその可能性すら無いものの、将来のことは分からない。未来はいつだって明るく元気に健やかに人を不安にさせる。

 

そこで、精子凍結というものをオススメされた。読んで字のごとく、精子の冷凍保存である。液体窒素で凍らせるらしい。

これを最初に先生から聞いたとき、不謹慎というか、真面目に不妊治療等に取り組んでいる人には申し訳ないのだけれど、そういったものよりも技術への興味が勝ってしまった。精子だけとはいえ、コールドスリープなんてSFのド定番である。すぐに予約をとってもらって、行ってきた。

 

さて、精子を凍結させるためには当然精子を採集する。採集はコップより少し小さいサイズのカップに射精して、そこから精子を集める。もちろん一人で行う。

 

つまり、オナニーしなければならない。病院で。まじ?

 

 病院とは聳え立つ科学の城。科学と技術の粋を集め、医学を修めた者とそれを目指す人々が集うバベルの塔。そこでシコる俺。正直まったく気分が乗らない。

さらにもうひとつ、致命的な問題があった。私は乳首を弄らないとイけないのだ。

前述したように、採集するカップはあまり大きくない。右手はかわいい小さなつぼみ、左手は激しく前後するのがホームポジションの私は、カップを持つ手が足りない。遍く衆生を救い上げる千手観音の御手も、イカ臭いのはちょっと・・・と、私から距離をとる。神は死んだ。ならば自分で何とかするしかない。

選んだ方法はカップを股にはさみ、前かがみになりながらおいたしになる方法だった。手がダメなら足。サバンナの常識だ。

 

かくして私は未来への切符を手に入れた。白濁したそれはまるで私の未来を暗示しているようだったが、まるで意味はわからなかった。

ちなみに気になるお値段のほうは2万ちょっと。さらに1年ごとに更新料1万円と、やってることの割りに意外とリーズナブルではないだろうか。何を基準にしていいかはわからないけれども。保険は適用外だが、配偶者がいる場合は自治体から助成金が出るところもあるようである。

 

そうして、これ帰りに知り合いと会って今日どうしたん?とか言われたらちょっと病院でシコって来たって言わないといけないのかなと怯えながら帰ったのが昨日のことで、今日はすでに入院しパラマウントなベッドの上。明日には手術である。今は名前負けしているこのIDもブログ名も、明日には追いつき、いつの日か追い抜いてしまうかもしれない。クソゲーか。